入間川のアユ、ヤマメ、オイカワ釣りと増殖事業。入間漁業協同組合(埼玉県飯能市)

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ピストン釣りでフィールド調査。清冽な入間川の飯能河原

「やあ、釣れました!釣れましたよ!」。短い竿の先に小魚がぶら下がり、盛んに身をくねらせている。魚はオイカワ。透明のケースに移して観察した後、愛おしむように流れへと戻した。

ここは入間川の飯能河原(飯能市)。釣り人は嶋田順一さん(72)=市内在住=。元飯能市議会議員で自然観察家。専門的に研究するのはクモ。東京蜘蛛談話会会員でもある。Тシャツにショートパンツ、足元はスニーカー。そして、ベースボールキャップ。まるで、夏休みを謳歌する少年のようなスタイルで、流れに立ち込んでいた。

嶋田さんはクモ類の調査が専門だが、飯能河原下流の岩沢や阿須地区の入間川の水辺も、調査対象のフィールド。河川に棲む水生生物は水質汚濁の指標ともなる。1年を通し、一帯に生息する水生生物を観察し続けている。

飯能河原での魚釣りは、この時期のオイカワの生息具合と水生昆虫の種類を、阿須・岩沢地区の入間川と比較するための作業。

嶋田さんは、作業に特別な仕掛けは用意しない。釣り方は、子どもたちが手軽に楽しめる「ピストン釣り」という釣法。道具は竿と糸と針だけだ。エサはその場で採取したカゲロウやトビケラなどの水生昆虫を使う。エサの採取作業で、ある程度、どのような種類の水生昆虫が棲んでいるかも把握できる。

ピストン釣りは、下流に向かって浅瀬に立ち込み、短竿の先を水中に沈め、仕掛けを流しきったら、竿をリズミカルに前後に振って魚信を待つやり方。竿が前後に動くので、ピストン釣りと呼ばれている。

嶋田さんがこの日、釣り座に選んだ場所は飯能河原の堰上の浅瀬。川虫を針に付け、腰を屈めて竿先を水中に入れ、前後に振ると、すぐさまヒット。体長7~8センチほどのオイカワだ。

針を外してリリースし、再び同様の動作を繰り返すと、間を置かずに元気なオイカワ。嶋田さんは、わずかな間に数匹のオイカワを釣り上げ、「いますね」と、ほほ笑んだ。

イカワは、コイ科の小魚。県内の多くの河川に生息するポピュラーな魚で、その生息数については県内でも入間川が特に多いと、漁協関係者や釣り人の間で言われている。オイカワは初夏から秋まで産卵し、特に産卵期のオスはオレンジや緑色の模様が体に現れて美しい。

飯能市は毎年、入間川高麗川、成木川の公共用水域で水質調査を実施している。令和5年度の調査結果をみると、飯能河原の割岩橋下のBOD(水質汚濁の程度を示す指標の一つで、数値が大きいほど水質が悪い)の年平均値は0・6ミリグラムパーリットルで、生活環境の保全に関する環境基準(2ミリグラムパーリットル以下)を満たし、一帯の入間川の水質が良好であることを示している。

飯能河原のピストン釣りで、嶋田さんがエサに使ったのは、その場で採取した清冽な水質を好むニンギョウトビケラの幼虫だった。

嶋田さんは、飯能河原での変わらぬオイカワの出現と水生昆虫の豊かさを喜んだが、気がかりは観察を継続する阿須・岩沢地区の入間川の水質が上流域と比べて良好とは言えないこと。市の5年度水質調査では、阿岩橋下のBODは年平均値3・3ミリグラムパーリットルと環境基準を超過し、大腸菌群数についても他の計測地点を大幅に上回っている。

「飯能河原の水質はとても良好。しかし、たった3キロメートル下流の阿須地区の入間川の水質については環境基準を上回っています。これからも観察を続け、注意深く見守っていきます」と嶋田さんは話した。

※日刊文化新聞掲載記事を一部加筆、修正しました。嶋田さんは、専用の竹竿を数十本所有するピストン釣りの名手。小学校の課外授業などでもピストン釣りを指導しています。